第20回 セ・パの強さを比較する(2)(2021.6.17)


 2年近く更新していなかったが、ちょうど交流戦が終わったので、ブラッドリーテリーモデル(Bradley-Terry model、BTモデル)で12球団の強さを比較する。BTモデルについては第18回をご覧いただきたい。

 下の表は今年ペナントレースの対戦成績(6月16日終了まで)である。πiを見ると、パ・リーグは実際の順位と一致しているが、セ・リーグは2位タイの巨人とヤクルトでは巨人の方が上になった。おそらく、阪神との対戦成績が巨人の方が良いのと、巨人とヤクルトの直接対決で巨人が勝ち越しているのが理由だと思う。



 12球団のπiを比較すると、阪神、巨人、楽天、ヤクルトの順になった。勝率が.672の阪神のπiは90.96で圧倒している。セ・リーグの首位で、交流戦を2位で終えたのが大きいと言える。また、巨人と楽天の勝率を見ると巨人の方が低いが、直接対決で2勝1敗と勝ち越した影響なのかπiでは逆転している。

 次に、カモと苦手の関係だ。絶対値が0.7以上に色をつけた。
 楽天は西武をカモ(6勝0敗)、ソフトバンクを苦手(1勝4敗)にしており、阪神はヤクルトをカモ(7勝1敗)、中日をやや苦手(4勝3敗)にしていることがわかる。首位の阪神だと、4位の中日に1つ程度の勝ち越しでは苦手と判定されるのがBTモデルの特色だ。



 続いて、第18回と同様に、引分は0.5勝0.5敗として計算した場合も見ていく。特に今年は延長戦がなく引分が多いので、それがどう影響するだろうか。



 まず、勝率を見ると、パ・リーグはオリックスがソフトバンクを上回り、セ・リーグはヤクルトが巨人を上回った。
 巨人とヤクルトの実際の順位と勝率は同じだが、引分は巨人が10、ヤクルトが7なので、勝ち越している場合は引分が多いほど勝率が下がり5割に近づく。それによる影響なのか勝率だけでなく、πiも逆転した。
 同様に、34勝31敗のオリックスに対して、0.5勝0.5敗が加算されたソフトバンクの勝率がオリックスを下回り、πiも逆転した。

 カモと苦手の関係を見ると、例えば、ソフトバンクvs広島が引分なしだと1勝0敗で0.73(カモ)だったが、2引分を含めて2勝1敗にすると0.05(期待値に近く妥当な結果)と大きく変化した。
 ペナントレースのように勝数と敗数から強さをはかる(πiを求める)のであれば引分を含めない方が自然だが、互角(勝てなかった、負けなかった)という結果も重要な情報なので引分も含めた方が良いのではないかと思う。




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