第5回 『左打者』の有利さ(2002.8.10)


日本人の「右利き」率はどれくらいだろうか。私の学生時代を振り返ってもクラスに1人か2人ぐらいだったように思う。日本人の多くは右利きのため(差別的な意図はありません:念のため)、左利きは「ギッチョ」と呼ばれ、幼少の頃に矯正されるケースも多いと聞く。母によると私もそうだったらしい。それに左利き用のハサミや包丁は製造が少ないので右利き用のそれと比べると高い。音楽をやってる知人によると、ギターだと3万円も違う、とのことだった。

そんな中、左利きが重宝される世界がある。そう、スポーツの世界である。野球をはじめ、サッカー、テニス、バレー、ボクシングでは左利きは「サウスポー」もしくは「レフティー」と呼ばれ、少数派の強みを発揮している。野球を例にとっても「左のワンポイントリリーフ」は古くからある言葉だが、右投手に対してそのような呼び名はない。
一般的には少数派の左利きだが、野球の世界は左が多い。特に打者に顕著である。なぜ打者に左が多いか?
1つは右投手に対抗するため、1つは「1塁に近い」ためだろう。左打席は1塁に近いという利点だけでなく、打った時に体が1塁方向に流れるのですぐに走ることができる。右打席だと3塁方向に流れた体勢を直さなければいけないので、どうしてもスタートが遅れる。ヒットが毎度毎度、野手の間を抜けたり、頭を越えるならスタートの遅れは関係ないが、野手正面へのボテボテの当たりでアウトかセーフかギリギリの場合は一歩二歩の違いが大きな違いになる。

そこで、左打者が右打者に比べてどれだけ有利なのかを表しているのが下のグラフである。  

1995年〜2001年までの7年間のセ・パ両リーグで規定打席に達した459人について調査を行った。

グラフに見方について説明しよう。まず、一番上の「全体」と書かれた帯グラフに注目していただきたい。これは459人の左右別の構成比である。単位はもちろん%だ。つまり、全体の52%は右打者で、48%は左打者(両打も含む)ということだ。一番右の「n」は人数である。

次にその下側のグラフについて述べる。これはクロス集計と呼ばれる手法で、各打率における打者の構成比を表したものである。
なお、編集の都合上、各打率の表現を簡略化しているが、正しくは上から「0.340以上」「0.320以上0.340未満」「0.300以上0.320未満」・・・「0.240未満」である。

さてグラフに目を移すと、過去7年間で「0.340以上」の打者は10人で、そのうち80%が左打者である。nが少ないので「80%である」ことを強調するのは危険であるが、左打者の割合が多いのは間違いない。この数字を引き上げているのが言うまでもなくイチローの存在である。nが10のうちの6回がイチローなのだからその凄さがわかる。

全体の構成比では右打者の方が多いにもかかわらず、打率が下がっていくにつれて右打者の割合が増えていることがおわかりいただけるだろうか。「0.320以上0.340未満」では右打者も健闘しているが、多くの右打者が年間で何本かヒットを損していると言えそうだ。

本当なら右打者の打率、左打者の打率も出してよりはっきりさせたいところだが打ち込みが面倒なのでしません。時間があればもう数年分の打撃成績を追加して精度の高い結果を出したいと思う。


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