第6回 『左打者』の有利さ その2(2002.9.14)



本題に入る前に、前回の分析に追加と補正をいくつか行ったので加筆。

●2年分のデータを追加して1993年〜2001年までの9年分を分析に使用。
●打率の区分を「0.330以上」「0.310以上〜0.330未満」「0.290以上〜0.310未満」
  「0.270以上〜0.290未満」「0.250以上〜0.270未満」「0.250未満」に変更。
●グラフの%表示を小数点第1位に変更。

 これらを踏まえた結果が左の帯グラフである。
 2年分を追加したことにより、全体の人数が119人増えて578人になった。
 全体の半分以上である53.6%(310人)が右打者にもかかわらず、打率の上位ではその構成比が低くなっている。やはり右打者は左打者に比べて1塁から「遠い」と言えそうだし、同じ打率でも右打者と左打者とではその価値も違うということになるだろう。
 もっともそんなことを言い出したら「4番打者の打点王と1番打者では価値が違う」とか「打線の強いチームでの(投手の)15勝と弱いチームの15勝は違う」ということになりキリがなくなるのだが・・・。


 ここまでは打率について述べてきた。打率とは安打を打数で割ったものであるが、プロ野球では10回のうち3回の成功で一流と言われている。つまり一流と言われている人でも残りの7回は失敗しているのである。
 7回の失敗(凡退)としては三振、フライ、内野ゴロなど色々あるが、一番痛いのは併殺打であろう。自分だけでなく塁上にいる走者もアウトにしてしまうのだから。
 ちなみに併殺打は、ゴロのアウトによってのみ成立する。
 例えば、無死1塁(走者A選手)で打者のB選手が内野ゴロを打って、打球が2塁→1塁(逆も可)へ送球されて(両者ともアウトになって)打者Bに「併殺打」が記録される。当たり前じゃないか、と思うかもしれないが、似たケースとして無死2塁(走者A)で打者Bが痛烈なライナーを放って、それを2塁手がノーバウンドで捕球し、遊撃手に送球して飛び出した走者Aをアウトにしても守備側に「併殺」がつくが、打者Bには「併殺打」はつかないのである。
 また、走者Aがアウトになっても打者走者Bが1塁でアウトにならなければ併殺打とはならないので(ただし打率は下がる)、これも右打者と左打者とで差がありそうである。

 そこで打率の時と同様に、併殺打について述べたのが左の帯グラフである。元のデータはもちろん9年分の打撃成績(規定打席到達者のみ)である。
 併殺打の数だけだと打席が多く回ってくる1〜2番打者に不利になるので、併殺打を打数で割った「併殺打率」も算出し、合わせてグラフも作成した。「5未満」とは0〜4、「10未満」とは5〜9を表している。同様に「1%未満」とは0以上1%未満、「2%未満」とは1%以上2%未満のことである。

 結果はやはり右打者が苦戦していると言えよう。
 上のグラフを見ると、「5未満」は84人いるが右打者はわずかに19%(16人)である。以下、数が増えるごとに右打者が増えている。「20以上」で右打者が割合が増えているが、これは打数の多い左打者が含まれていると推察できる。
 下のグラフを見ると、上のグラフと同じ5カテゴリー(区分)ながら右打者の不利さがより強く出ており、打数の多い打者のハンデが克服されている。右打者でも併殺打の多いタイプが長打力のある打者で、バットを振り切ると必然的に強い打球になるので、野手の正面に飛んだ場合には体が3塁方向に流れていることもあってどうしても併殺打が多くなる。よく本塁打と三振は隣り合わせというが、本塁打と併殺打もまた隣り合わせなのである。次回はそのあたりを突っ込んで述べたいと思う。


プロ野球記録回顧部屋に戻る