第19回 第4回のその後(2005〜2018年)(2019.08.04)


 第4回で本塁打と打点の相関関係を見て、回帰分析をしたのが今から18年前だ。パソコンのキーボードの横で、季刊ベースボールマガジンの冬季号を開きながら、1995〜2000年の6年間のデータを入力したのを覚えている。当時は日本野球機構のWebページがないだけでなく、ネット上に打撃成績データをアップしている人が少なかった(検索にヒットしなかっただけかもしれないが)ため、自分で入力するしかなかったのだ。
 今回は2005〜2018年の14年間を見ていきたい。日本野球機構のページには2005年以降の打撃成績が載っているので、データはそちらからコピーした。14年間で規定打席に到達したのが延べ816人だった。

人数回数割合
本塁打王&打点王416144.2%
本塁打王&首位打者585.8%
首位打者&打点王996.5%

 本塁打王&打点王は相変わらず多く、2001年以降も11人が14回達成し、全体の割合は44.2%だった。割合は回数÷138で算出した。138とは69(年)×2(リーグ)だ。
 その他の2冠王は少なく、本塁打王&首位打者は2001年以降も達成者がいなかった。首位打者&打点王は巨人・阿部慎之助(2012年)とDeNA・ブランコ(2013年)の2人が2001年以降の達成者だ。

 第4回と同様に、本塁打と打点の散布図を作成した。右上がりの傾向は変わらない。第4回の当時は大学を卒業したばかりで、Excel2000を使っていた。その時はデフォルトの表示のまま画像化したが、今回は色などの表示を変えた。
 次に、散布図上で右クリックをして回帰直線を追加した。回帰式はY=1.89X+35.095で、相関係数は0.874、決定係数(R2乗)は0.765だった。第4回の回帰式がY=1.96X+31.35なので、定数項(切片)が約4大きくなり、傾きはほとんど変わらないといえるだろう。



 今回はその他の2冠の散布図も載せる。両方とも回帰直線を入れている。左が打率と打点で、回帰式はY=244.82X−5.998、相関係数は0.279、決定係数(R2乗)は0.078だった。右が本塁打と打率で、回帰式はY=0.0004X+0.2764、相関係数は0.162、決定係数(R2乗)は0.026だった。
 両方とも特に傾向は見られず、相関係数は0.3に満たない弱い相関しかない。やはり、これら2冠を両立するのが難しいようで、達成者の人数が少ないのがわかるというものだ。



 ついでに、三振についても散布図を作成した。左が打率と三振で、回帰式はY=−189.81X+140.09、相関係数は−0.193、決定係数(R2乗)は0.037だった。右が本塁打と三振で、回帰式はY=1.369X+66.208、相関係数は0.566、決定係数(R2乗)は0.321だった。
 三振は凡打なので打率とは負の相関関係(右下がりの傾向)にあることは予想できたが、散布図を描くと弱い関係しかなかった。凡打は三振だけでなく、ゴロアウトやフライアウトなどもあるので、三振の数だけで打率は説明できないということなのだろう。
 打率が割り算の数値なのに対して、三振は足し算の数値なので、三振は打席数の大小に影響される。関係性を見るには三振も割り算の数値に変換するのが適切なのかもしれない。散布図は省略するが、縦軸を三振数÷打席数または三振数÷打数の三振率にした場合の相関係数はいずれも−0.294となり、三振数を縦軸にした場合よりも右下がりの傾向が見られた。



 本塁打が多い打者は強振するので三振も多くなるようで、右上がりの傾向が見られた。本塁打と打点ほどの相関係数(0.874)はなかったが、0.566というのは充分に相関関係があるといえる。本塁打が多くなると、敬遠気味の四球や敬遠で勝負を避けられることも多くなるので、三振の数も伸びず、それが0.6に満たなかった原因かもしれない。
 この中で注目は広島東洋カープの前田智徳で、2005年が32本塁打・43三振、2006年が23本塁打・42三振、2007年が15本塁打・31三振で、本塁打の割に三振がとても少なかった。散布図でも回帰直線から遠く離れた下の方に位置しており、まさにボールを捉える技術の高さがわかる。
 NPBの三振のシーズン記録のページを見ると、近鉄バファローズのラルフ・ブライアントがすごい。当時は130試合制だったのに、未だに歴代1〜4位を占めているのだ。三振の多さの良し悪しは別にして、これはこれで次元の違う選手だった。機会があれば、古い記録も追加して紹介できればと思う。


 
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